無担保ローンはサラ金が元祖!銀行のカードローンは後追いだった?
元々ローンというものは担保や保証人がいなければ借りられないものでしたが、サラ金が現れて無担保、保証人無しで借入れできるローンが出現したのです。しかし高金利の上に厳しい取り立てが行われ一時は失速しました。
しかしその後サラ金もイメージ刷新で利用者を増やしていったため、銀行でも無視できない存在になって、銀行も無担保、保証人無しのカードローンの提供を開始することになりました。
その後貸金業法が改正されて、サラ金の業務を大きく縛ることになってしまい、サラ金は軒並み経営不振に陥ることになって、現在では無担保ローンと言えば銀行のカードローンを連想するほど銀行のほうが主役になっています。
サラ金が現れた理由とは?銀行が担保と保証人を要求していたのが原因
元々ローンと言えば銀行から借りていたものですが、融資の条件として担保と保証人が要求されていたため、なかなか誰もが借りられるというものではなく、借りれずに困っていた人も少なくはなかったのです。
そこに登場したのがサラ金で、担保などが用意できず、こういった銀行からの借入が難しい人に対して無担保、保証人無しで融資を始め、多くの人が利用できたことから最初は大変好評で、利用者も増加していくことになりました。
しかし、一時は好評だったサラ金でしたが、銀行に比べてかなりの高金利だったために返済に行き詰ってしまう人が現れ始め、それに対して厳しい取り立てを行ったことから、サラ金の商売は大失敗してしまいます。
銀行のローン利用は担保と保証人が必要だった
戦後の復興時に少しづつ豊かになっていく中で、いつまでもバラックと言うわけにもいかず、家を建てる人が増えていきますが、当時でも現金で建てられるわけではなく、やはり今と同じように金融機関から融資を受けなければなりませんでした。
当時のこういった資金需要を支えていたのはやはり銀行でしたが、融資を受ける為には担保や保証人を用意する必要が有りました。
この時期に家を建てるとすればその土地を担保にして、更に知り合いを頼って保証人になってもらったというような人が多かったはずです。
住宅建築での資金需要が一段落したころには、日本は高度成長期に入り、さらに豊かさを求めて、様々なものを購入するための新たな資金需要が出てきましたが、やはり銀行から融資を受ける為には、担保と保証人を用意する必要が有りました。
担保はローンの利用者が返済できなかったときに、金融機関が担保を処分して、返済分に充てるために必要とされたもので、様々なものが担保として利用されてきましたが、日本の金融機関は不動産を好む傾向が有りました。
これは不動産神話というものが有って、これによれば日本の不動産は必ず値上がりするといわれていました。確かに戦後一貫して不動産価格は上がり続け、1990年代のバブル崩壊までこれが続いていました。
現在ではこの神話も崩壊しましたが、不動産に代わるようなものが他に有りませんから、現在でもローンの担保には不動産が使われることが多く、大部分の金融機関には不動産担保ローンというものが用意されています。
またリバースモーゲージと言って所有する不動産を担保にして生前は利用した利息分だけを支払って、元本の返済は死後にその不動産で返済するという、高齢化社会を迎え老後を豊かに過ごすためのローンも用意されています。
サラ金が無担保で保証人不要のローンを始め歓迎される
高度成長期に資金需要は、不動産を持っていてもいなくても、様々な欲求を満たすためのものでしたから、不動産を持っていれば担保の用意もできますが、持っていない人には担保の用意はそう簡単にはできませんでした。
また、その頃になると、隣近所の付き合いも希薄になり、さらに保証人の危険性が一般に認識されるようになっていて、保証人を引き受けてくれるのは身内以外には殆どいなくなって、こちらも用意できない場合が増えていました。
こういった背景が有ったため、銀行から借入れできない人が増えて不満がたまっていました。そこに登場してきたのが、サラリーマン金融(通称サラ金)という貸金業者です。
このサラ金は事業資金を銀行から借りて、その借入金利より大きい金利で利用者に融資をし、この金利差から生じる利息の差分を利益にするというビジネスモデルで商売をしていました。
高金利と厳しい取り立てでサラ金は大失敗
ところが歓迎はすぐに失望に変わります。先ほど説明したビジネスモデルを思い出してください。サラ金は銀行より金利が高ければ高いほど利益を出せることになります。しかも当時の上限金利は現在とは比べ物にならないほど高いものでした。
このためサラ金から融資を受けると、非常に高額の利息を支払わなければならなくなったのです。当然の結果として、すぐに返済に行き詰ってしまう人が出始め、その数は急激に増えていくことになってしまったわけです。
しかも大部分のサラ金と言うのは、多かれ少なかれ裏社会とのつながりを持っていたため、返済が滞ってしまうと、そういった裏社会の人間を使って厳しい取り立てを行うところが多く、利用者を追い込んでいきました。
中にはそういった取り立てに耐え切れず、夜逃げをしたり場合によっては一家心中に追い込まれる例も出てきたため、サラ金の存在自体が大きな社会問題になって行きました。
そういったことも有って、多くの人は無担保での融資は利用したくてもサラ金には近づくのも嫌だと考えるようになり、サラ金の事業は大失敗ということになってしまいました。
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このようにサラ金は厳しい取り立てを行うことによって、社会問題になってしまい、そのままでは誰も利用しようとはせず商売を続けることはできなかったでしょう。そこで商売を再建するためにイメージ刷新を図ります。
その状況でも銀行から借りられない人と言うのは確実に存在するわけですから、サラ金も商売を立て直すことを考え、例えば窓口に行かなくても申込む方法を提供するなど、様々な方法を使って利用者を増やしていくことになります。
暫くすると、利用者が増加して、順調に業績を伸ばすことができるようになっていきましたが、今度は銀行が黙っておれず、カードローンを始めることで無担保、保証人無しの融資の提供を始めることになりました。
サラ金から消費者金融へイメージ刷新
こうしてサラ金では人が寄り付かなくなってしまい、サラ金各社はこのイメージを改善しなければ潰れてしまうという危機感から、様々な対策を取っていくことになります。現在に至るまでサラ金はこのイメージ改善に取り組んでいます。
まず必要だったのはサラ金と言う名称自体が使い物にならなくなってしまったので、そこを変える事でした。そこで考えられたのが消費者金融と言う名称です。
現在でも消費者金融はサラ金と呼ばれるのを極端に嫌うのはこういった経緯が有るためです。
この他にもそれまでは店舗内も殺伐として何となく汚いイメージが有ったものですが、改装して大変おしゃれな作りにして、一見すれば立派な金融機関に見えるようになりました。
さらにフレッシュなイメージの女性タレントを起用したテレビコマーシャルを流すことによってイメージ改善をするなど、存続をかけた取り組みが行われました。
様々な方法でサラ金の使用者が増加
またこのイメージ戦略と平行して技術的な取り組みも行われていました。イメージが多少改善されたと言っても、サラ金自体に行きたくないと考える人が多く、更に他人の目も気にして行きたくてもいけないという人もたくさんいました。
このため有る消費者金融が店舗内の窓口に行かなくても融資の申込みを行えるように、自動契約機を開発して店頭に設置したところ、利用者は増加に転じました。このため消費者金融各社は一斉に大急ぎで自動契約機を開発しました。
自動契約機の開発が間に合わなかった業者は、自動契約機の張りぼてを作って中に人間が入って対応するという、嘘のような話も実際に行われていました。これによってとにかく減り続けていた利用者が増えていくことになったわけです。
本文では自動契約機の開発について説明していますが、消費者金融はこの自動契約機で技術というものをうまく利用することを重視し始めることになり、その後も新しい技術が出てくる度にいち早くそれを利用するようになりました。
例えばインターネットが一般化してくると、すぐにこれに対応してインターネット上からの申込みができるようにしました。これによって自動契約機ではまだ店頭に行かなければならなかったものが、家に居ながらにして申込めるようになりました。
さらに携帯電話でインターネットが利用できるようになると、携帯電話からの申込みにもすぐに対応して、利用者を呼び込むことに成功しています。
またスマホが登場すると、いち早く申込専用アプリを提供して、アプリ内で必要書類の撮影までできるようになって、パソコンや携帯電話ではまだ不便な点が残っていたものが、大変便利に申し込めるようになりました。
銀行も無視できなくなって無担保で保証人無しのカードローン開始
こうしてサラ金改め消費者金融は徐々に利用者を増やすことになり、大手消費者金融は株式の上場を実現しました。一時崩壊すれすれだったサラ金はこうして消費者金融となってよみがえってきたということです。
もちろん、それでも金利は銀行よりも高い設定ですが、法令も厳しくなって、以前に比べれば大変現実的なものになって借りやすい設定になりました。このため更に利用者が増えることになって銀行もこれを無視できなくなって来ていました。
このため銀行でも大手サラ金のカードを用いたキャッシングローンを真似て新たにカードローンを始めることになりました。
しかも消費者金融に対抗するため、それまでの銀行ではあり得なかった無担保、保証人無しで融資を始めたのです。
貸金業法強化でサラ金が失速!無担保ローンでも銀行が主役になる
サラ金が社会問題になった時に政府も黙っていることができず、貸金業法が作られましたが、この法律は何度か改正されてその度に規制が強化され、銀行がカードローンに参入した直後に直近の改正が行われました。
この改正では総量規制などサラ金の商売を縛る内容が盛り込まれて、商売がしにくくなっただけではなく、利益もなかなか出せなくなってしまったため、サラ金は軒並み経営が傾くことになり、業界全体が危機的状況になってしまいました。
このため無担保ローンの分野でも銀行が躍り出る事になり、それまでサラ金が無担保ローンの主役だったものが、銀行が取って代わることになりました。今後はサラ金は生き残りをかけて、利用者確保が課題になるでしょう。
貸金業法の改正
このように利用者も増えて一息ついた感のあった消費者金融業界でしたが、そう安閑としてはいられない事態が迫っていました。
消費者金融の行き過ぎたやり方を規制するために貸金業法と言う法律が有りますが、ちょうどこの頃に、当時問題になっていた買い物依存症やパチンコ依存症などへの対策として消費者金融の融資の規制などを盛り込む改正が行われました。
この改正で、その後の消費者金融に大きな影響をもたらしたのは次の点です。
- 総量規制の導入
- グレーゾーン金利の撤廃
総量規制では融資できる上限を利用者の収入にリンクさせ、収入の3分の1までしか融資できなくなり、さらにグレーゾーン金利の撤廃で、消費者金融の収入の元である金利をさらに下げざるを得なくなってしまいました。
法律には様々なものが有って、制定されて経緯が異なるものでも、同じようなことを規定している条文が入ってしまうことが有ります。
出資法と利息制限法の間でもこの様な事が有って、両者間で整合性が取れておらず、上限金利の値が違っていたことから、この両方の間の金利のことをグレーゾーン金利と呼んで、これが適法なのかどうか大きな問題になっていました。
当然ですが、貸し手の消費者金融のほうは値の大きい出資法の規定を前提にし、借り手の利用者のほうは値の小さい利息制限法を前提にしますから、この点で争いが起きて多くの裁判で争われました。
直近の貸金業の改正では利息制限法の規定を適用するということが決められたため、それまで支払っていた利息制限法の規定を超える金利分の利息は払い過ぎということになりました。
このためこの改正以後、今度はこの支払い過ぎた分の利息を過払金と呼ぶようになって、これを返金してもらうための過払金請求ができるようになり、このことによって消費者金融には大きな負担が発生することになってしまいました。
サラ金は軒並み経営不振に陥る
この貸金業法の改正は、消費者金融の経営体力を大きく奪うことになり、大手業者から中小業者まで、ほとんどすべての業者の経営が傾いてしまうことになりました。
このため大手業者を始め当時貸金業として営業していた業者の半数は現在既に消えてしまいました。倒産して無くなってしまったものや、貸金業から撤退してしまったものまで様々ですし、日本から出て言った業者もあります。
現在でも、この苦しい状態と言うのは大きくっ変わっているわけではなく、経営が傾いている業者は沢山有って、大手業者の中にも経営再建中と言うところも有ります。
今後は、利用者を集めるために、他には無いような特徴を出して、差別化を行わなければ、消費者金融として生き残っていくのは難しいのではないかと考えられます。
無担保ローンの分野でも銀行のカードローンが主役になる
この貸金業法と言うのは消費者金融やクレジットカードのキャッシング枠などに適用されますが、同じお金を貸す業者である銀行や信用金庫には適用されません。したがって銀行などでは総量規制などは無い訳です。
しかも銀行等ではもともと、利息制限法の上限金利よりもかなり低い金利で貸していますから、金利が問題になる訳でもないので、この無担保ローンの分野でも、銀行には縛りが無く自由に商売ができるわけです。
このためこの分野ではこれまでは消費者金融が主役として君臨していましたが、この貸金業法の改正以降は、一躍銀行が主役に躍り出ることになったわけです。
消費者金融には大変厳しい時代がまた到来したということになりました。
銀行の無担保ローンの裏でサラ金が協力?信用保証業務は銀行には無理
サラ金と言っても大手消費者金融の多くは、やはり経営が傾き消えて行ったところは有りましたが、現在では銀行の支援を受けてグループ企業になり、生き残ることになりました。
銀行はカードローンを開始する時点で、担保や保証人に代わる個人の信用保証業務を大手消費者金融に委託していたため、経営が傾いたと言っても、簡単に潰れてしまわれてはカードローンの存続が危ぶまれてしまう為に支援を行いました。
このため現在では銀行も大手消費者金融も無担保ローンの提供では依存関係が出来上がっており、どちらも無くてはならない存在だと言えるでしょう。
今後は大手消費者金融は無担保ローンの展開と信用保証と言う2つの収入源で経営を安定させていくことができるはずです。
大手消費者金融は銀行のグループ企業になって生き残る
このように消費者金融には苦しい時代を迎えたのですが、一部の大手消費者金融はちょっと事情が違っています。これ等の大手業者には銀行が大きな資本を注入して、傾いてしまった経営を立て直すことになりました。
このため中小の消費者金融は現在でもかなり経営が苦しい状態が続いているのですが、大手消費者金融の多くは、銀行のグループ企業と言う形で生き残っており、経営体力もついて、健全な企業になっています。
現在でも一部の大手業者は銀行のグループには入らず、独立を保っていますが、他の大手消費者金融に比べ経営体力は戻っておらず、経営再建中と言う状態が続いており、予断を許さない状況と考えている人もいます。
銀行はなぜ大手消費者金融を支援したのか
では銀行はカードローンではライバル関係にある大手消費者金融をなぜ支援したのでしょうか。これは実は銀行の弱点と言っても良いのですが、カードローンの展開をするにあたり、大手消費者金融に支援をしてもらっているからです。
銀行というのは説明してきた通りカードローンを始めるまでは無担保ローンは提供していませんでした。このため銀行には消費者金融のような個人の信用保証と言う技術が有りません。
そこでその業務を消費者金融に委託したのです。
したがってもしその大手消費者金融が倒産してしまったら、せっかく順調に利用者を増やしているカードローンの提供が危うくなってしまう事になります。このため銀行は自分のグループ内に置いて経営をてて直さざるを得なかったわけです。
今では銀行も大手消費者金融も無担保ローンでは依存関係にある
このように銀行は消費者記金融に保証業務を委託し、消費者金融は銀行からの支援に依存するというように相互に依存する関係が出来上がっており、いまではどちらも無くてはならない存在になっていると言って良いでしょう。
サラ金と呼ばれていた時には怪しさ満点の企業でしたが、今や大手消費者金融は銀行を含めて無担保ローンの提供にはなくてはならない存在となり、立派な金融機関に成長したと言えるのではないでしょうか。
本文では銀行と大手消費者金融はうまく住み分けができている様な説明になっていますが、実はいろいろな複雑な関係も存在していて、銀行のほうにも消費者金融を支援することには様々な思惑が有ったことが透けて見えます。
例えばレイクという名前を聞いたことはないでしょうか。レイクと言えば今でも大手消費者金融の一つだと考えている人が多いと思いますが、実は現在レイクは新生銀行のカードローンのブランド名になっています。
これは旧レイクを支援していた新生銀行がレイクと言う名前を使って自分の所のカードローン事業の強化を狙ったものです。
ただし旧レイクが無くなってしまったわけではなく新生ファイナンシャルと言う名前の消費者金融として残っています。しかもこの消費者金融ではレイクと言う名前は使っていませんがカードローンの提供はおこなっています。
このように銀行と大手消費者金融の関係と言うのは外から見ると複雑怪奇に見える部分もあるのです。
ここでサラ金と無担保ローンについて纏めておきます。
- サラ金は担保が用意できず銀行が利用できない人に無担保で融資する業者として歓迎されていたが強引な取り立てで失敗してしまった。
- イメージを改善して無担保ローンで業績を伸ばしたサラ金を見て銀行も無担保ローンであるカードローンを始めた
- 貸金業法の強化でサラ金が失速する中銀行が無担保ローンでも主役になった
- 大手消費者金融は銀行から無担保ローンの信用保証業務を請け負って銀行との共存関係を作った
無担保ローンは利用者にとっては借り易いものですが、借り易いからと言って安易に借りるものではありません。まずは借りなくて済む方法を考えることが必要なのは以前のローンと同じです。